児童福祉法施行令の一部を改正する政令等の公布について

/子発0331第13号/障発0331第11号/

都道府県知事(指定都市、中核市及び児童相談所設置市の市長を含む。以下同じ。)又は市町村長においては、一般指導監査として、児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除く。以下同じ。)又は家庭的保育事業等(家庭的保育事業(児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)第6条の3第9項)、小規模保育事業(同条第10項)、居宅訪問型保育事業(同条第11項)又は事業所内保育事業(同条第12項)をいう。以下同じ。)が法第45条第1項又は法第34条の16第1項の規定に基づき定められた基準を満たしているかを、1年に1回以上、当該職員に実地で検査させなければならないこととされている(児童福祉法施行令(昭和23年政令第74号。以下「政令」という。)第38条及び第35条の4)。

令和3年地方分権改革に関する提案募集において、原則実地とされている社会福祉法人及び社会福祉施設等に対する指導監査等について、昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止等の観点から、実地によらずとも実施できるよう、書面やリモートでの監査を認めるよう提案を受けたことから、「令和3年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和3年12月21日閣議決定)において、「児童福祉施設に対する一般指導監査については、新型コロナウイルス感染症等の感染拡大防止の観点から、実地によらない方法での実施を可能とする方向で見直すことを検討し、令和3年度中に結論を得る。その結果に基づいて必要な措置を講ずる。」とされた。

当該対応方針を踏まえ、厚生労働省が開催した「児童福祉施設等の感染防止対策・指導監査の在り方に関する研究会」(以下「研究会」という。)において、児童福祉施設等への一般指導監査のあり方について検討を行い、実地による検査を原則とする取扱いを維持しつつ、感染症の流行状況や前回の検査結果等を踏まえた上で、例外的に書面検査を認めることとする旨の報告書を令和4年1月にとりまとめた。

本年、3月27日、この報告書に基づいた内容で改正を行うこととした「児童福祉法施行令の一部を改正する政令」(令和5年政令第77号。以下「改正政令」という。)が公布され、また、3月31日、「児童福祉法施行規則の一部を改正する省令」(令和5年厚生労働省令第59号。以下「改正省令」という。)が公布され、令和5年4月1日より施行される。

改正政令及び改正省令の趣旨及び内容、運用に伴う留意事項について、下記のとおりお示しするので、十分御了知の上、その運用に遺漏なきを期されたい。また、管内の市区町村に周知をお願いする。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であることを申し添える。

第1 改正の趣旨

上述のとおり、令和3年地方分権改革に関する提案募集において、社会福祉法人及び社会福祉施設等に対する指導監査等は、実地による実施が原則とされているが、昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止等の観点から、実地によらずとも監査等の実施ができるよう、書面やリモート等による方法も可能としたいとの提案を受けた。

そこで、児童福祉施設等への一般指導監査のあり方について検討を行うため、厚生労働省において研究会を開催したところ、研究会構成員より「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の環境変化に直面する状況では、監査目的とはいえ、不特定多数の人間が児童福祉施設に出入りすることのリスクから、実地による監査を円滑に実施することが困難」、「地方自治体によっては、施設が遠方にある場合もあり、移動に長時間を要している」との指摘があった。

また、老人福祉施設及び障害者支援施設に対する指導監査については、「原則として毎年1回は、実地に全対象施設に対して一般監査を行うこととする。ただし、前年度における一般監査の結果、適正な運営が概ね確保されていると認められる施設等については、書面による一般監査の実施が認められる」とされている旨の説明を行った。(※1)

※1 第1回研究会を開催した令和3年8月時点の情報。老人福祉施設に対する一般監査は、令和3年11月の通知改正により、現行では、原則として3年に1回は、実地に全対象老人福祉施設に対し、行うこととされている。

こうしたことから、研究会においては、児童福祉施設等に対する都道府県知事等の一般指導監査は実地によるものを原則とした上で、例外的に、

・感染症の流行等、実地による監査を控えるべき事情があると認められ、かつ、直近の監査において大きな問題が確認されていない場合

・前年度の実地監査の結果、適正な運営が確保されている場合

のいずれかの場合においては、実地によらない監査を可能とすることが適当との報告書がとりまとめられた。

一方、令和3年7月に福岡県中間市において、令和4年9月には静岡県牧之原市において、保育所等の送迎バスに置き去りにされたこどもが亡くなるという大変痛ましい事案が発生し、また、静岡県裾野市の保育所や富山県富山市の認定こども園等において不適切な保育が行われていたという事案が発生するなど、保育所等における事案が繰り返し発生している昨今の状況を踏まえれば、児童福祉施設及び家庭的保育事業等におけるこどもの安全管理や適切な保育・支援の実施の重要性はますます大きくなっている。そのため、少なくとも来年度は、今般の事案を踏まえて一般指導監査で追加された点検項目や、こどもの安全管理や適切な保育・支援の実施に関する項目を重点的に確認するなど、これまで以上に一般指導監査の実効性を高める必要がある。

今般の政省令の改正は、こうした状況を踏まえ、保育等の質の確保と実効的な指導監査を両立させる観点から行うものである。

第2 改正内容

改正政令及び改正省令によって、都道府県知事による児童福祉施設への一般指導監査及び市町村長による家庭的保育事業等への一般指導監査は、年度ごとに1回以上、実地による検査を行うことを原則とした上で、当該児童福祉施設又は当該家庭的保育事業等について、

①天災その他やむを得ない事由により当該年度内に実地検査を行うことが著しく困難又は不適当と認められる場合(※2)

②以下の事項を勘案して実地検査が必ずしも必要でないと認められる場合(※2)

・前年度の実地検査の結果

・その児童福祉施設を設置してからの年数又はその家庭的保育事業等を開始してからの年数(児童福祉施設を設置又は家庭的保育事業等を開始してから3年を経過していることを目安とすること)

・その児童福祉施設等が所在する都道府県(指定都市、中核市及び児童相談所設置市を含む。以下同じ。)又はその家庭的保育事業等を行う事業所が所在する市町村における前年度の実地の検査の実施状況(その児童福祉施設が所在する都道府県又はその家庭的保育事業等を行う事業所が所在する市町村における、前年度の管内の児童福祉施設又は管内の家庭的保育事業等に対する実地検査の実施率が5割以上であること(令和5年度は、管内の児童福祉施設等、又は、管内の家庭的保育事業等の5割以上に実地による検査を行う計画を立てていること))

は、例外的に実地によらず検査を行うことできることとする。

※2 「その他やむを得ない事由」については、今般の新型コロナウイルス感染症の様に感染症が長期にわたって流行している状況を想定しており、一般指導監査に従事する職員の多忙など、都道府県又は市町村側の事情は対象とならない。

※3 ②は「前年度の実地検査の結果」、「その児童福祉施設を設置してからの年数又はその家庭的保育事業等を開始してからの年数」、「その児童福祉施設が所在する都道府県又はその家庭的保育事業等を行う事業所が所在する市町村における、前年度の実地の検査の実施状況」のいずれかの事項を満たせばよいものではなく、すべての事項を勘案する必要がある。

また、現行の「一年に一回以上」の文言は、毎年度1回以上検査を実施する意味であるところ、例外的に認められる実地によらない検査の可否は「前年度の」検査結果を勘案することとなることを踏まえ、政令上の文言を「年度ごとに一回以上」と改正することとする。

改正政令及び改正省令の施行日は令和5年4月1日である。

第3 改正政令の運用に伴う留意事項

現状、管内の児童福祉施設又は家庭的保育事業等に対して、政令に基づき1年に1回以上の実地による一般指導監査を行っていただいている都道府県や市町村がある一方で、これが実施できていない都道府県や市町村もあり、中には、その実施率が極端に低い都道府県や市町村がある。極端に実施率が低い都道府県又は市町村がある一方で、保育所等の送迎バスに置き去りにされたこどもが亡くなるという大変痛ましい事案や不適切な保育が行われていたという事案が発生するなど、保育所等における事案が繰り返し発生している昨今の状況を踏まえれば、児童福祉施設及び家庭的保育事業等におけるこどもの安全管理や適切な保育・支援の実施の重要性はますます大きくなっている。

こうした状況を鑑みて、保育等の質の確保と実効的な指導監査等を両立させる必要があり、以下4点にご留意いただきたい。

(1) 実地による検査に必要な体制の確保及び検査の実施率の向上について

各都道府県及び市町村においては、以下の内容も踏まえた上で、検査体制の確保、計画的な検査の実施、効果的かつ効率的な検査方法について、ご検討いただくようお願いする。

イ 必要な体制の確保について(地方交付税措置の拡充)

各都道府県及び市町村におかれては、効果的かつ効率的な検査を実施するため、管内の児童福祉施設及び家庭的保育事業等に対して検査を行うための体制の強化を行い、必要な検査体制の確保に取り組んでいただくようお願いする。

なお、児童福祉施設等に対して検査を行う体制の強化のため、令和5年度の地方交付税措置について、道府県の標準団体(人口170万人)あたり職員1名を増員することとされている。

ロ 実地による検査が原則であることを踏まえた対応について

今般の改正政令は、一定の要件を満たした場合においては実地によらない方法での検査を可能とするものであるが、原則はこれまでどおり実地による検査を求めるものであることから、管内の児童福祉施設及び家庭的保育事業等に対して、実地による検査を実施することを前提とした体制の整備を改めて図っていただきたい。

また、管内の児童福祉施設及び家庭的保育事業等において、不適切な保育等が行われていた事案やこどもの安全の懸念が生じる事案が発生した都道府県及び市町村においては、実地によらない検査が認められる要件を満たしているかどうかにかかわらず、少なくとも当該年度においては政令改正後も管内のすべての児童福祉施設及び家庭的保育事業等に対して実地による検査を行うことも検討すべきであり、こどもの安全管理等が適切に行われるよう対応いただきたい。

ハ 検査の実施率の向上について

各都道府県及び市町村においては、管内の児童福祉施設及び家庭的保育事業等に対する検査の実施率について、前年の実施率を上回る実績となるよう、計画的な検査の実施をお願いする。

ニ 実施率の定期的な把握・公表と向上計画の策定について

その上で、国において定期的に各都道府県及び市町村の検査の実施状況を確認し、その結果を公表するとともに、検査の実施率が低く、前年比等で一定の改善が見られない都道府県及び市町村に対しては、検査実施率向上に向けた目標値及び目標達成に向けた計画を策定し、検査の実施率向上のための取組の見える化を行っていただくことを依頼することを検討中である。

(2) 一般指導監査で、より優先的かつ重点的に確認すべき施設や事項について

昨今の保育所等における事案が繰り返し発生している状況を踏まえ、来年度は、一般指導監査において、こどもの安全管理や適切な保育・支援の実施に関する項目について重点的に確認していただきたいと考えており、具体的な項目については、「児童福祉行政指導監査実施要綱」(「児童福祉行政指導監査の実施について(通知)」(平成12年児発第471号厚生省児童家庭局長通知別紙))においてお示ししているため、確認いただきたい。

(3) 実地によらない検査の方法や、実地検査への切り替えについて

今般の改正政令によって実地によらない検査が可能となるのは、

①天災その他やむを得ない事由により当該年度内に実地検査を行うことが著しく困難又は不適当と認められる場合

②前年度の実地検査の結果その他厚生労働省令で定める事項を勘案して実地検査が必ずしも必要でないと認められる場合

のいずれかに該当する場合であるが、①の場合についても、直近の検査において問題が確認されている場合には、実地により検査を行うことを検討いただきたい。

また、②については、前年度、「実地による検査」を行うことが要件の一つとなるものであり、「実地によらない検査」を行った翌年度は、実地によらない検査は認められないものであることに留意願いたい。

さらに、実地によらない検査の方法については、「児童福祉行政指導監査実施要綱」(「児童福祉行政指導監査の実施について(通知)」(平成12年児発第471号厚生省児童家庭局長通知別紙))を踏まえつつ、実地によらない検査を行う際は、検査の実効性確保の観点から、

・ 書面確認のみではなく、テレビ会議、電話による確認を組み合わせて実施すること

・ 実地によらない検査で疑念が生じた場合等には、速やかに実地の検査に切り替えること

を徹底いただきたい。

なお、管内の児童福祉施設及び家庭的保育事業等に対して、①又は②に該当するため実地によらない検査を行うこととした場合には、都道府県及び市町村は、具体的に各施設等のどのような事情を踏まえて、①又は②のいずれかに該当するとして、実地によらない検査を行うこととしたかを、施設ごとに整理し、記録するようにしていただきたい。国においても、定期的な検査の実施状況の確認において、各都道府県及び市町村における①及び②それぞれに該当する施設数等も把握することを検討している。

(4) 特別指導監査の適切な運用について

都道府県知事又は市町村長は、児童福祉施設又は家庭的保育事業等に対して、一般指導監査のみならず、特別指導監査として検査を実施し、法第45条第1項又は法第34条の16第1項の規定に基づき定められた基準を満たしているかを確認することも可能である。

都道府県又は市町村においては、児童福祉施設や家庭的保育事業等の職員や保護者等から不適切な保育が疑われる事案の情報提供・相談等を受けた場合には、当該年度における一般指導監査を実施しているかどうかにかかわらず、こどもの安全の観点から、迅速に対応方針を協議し、必要に応じて、特別指導監査で事実関係の確認を行い、助言・指導を継続的に行うことが必要である。

さらに、事案の性質や重大性等に応じ、事案の公表、改善勧告若しくは改善命令又は事業停止命令を行う等の対応も判断していくことが重要である。

今般の改正政令は、一般指導監査に関するものであるが、特別指導監査についても適切な運用を改めてお願いする。

以上

別添1

別添2

    • URLをコピーしました!

    コメントする

    目次