児童発達支援ガイドライン

厚生労働省障害児支援施策より
児童発達支援に関するガイドライン策定検討会の成果物となります。

目次

第1章 総則

平成24年の児童福祉法改正において、障害のある子どもが身近な地域で適切な支援が受けられるように、従来の障害種別に分かれていた施設体系が一元化され、この際、児童発達支援は、主に未就学の障害のある子どもを対象に発達支援を提供するものとして位置づけられた。

この後、平成26年7月に取りまとめられた障害児支援の在り方に関する検討会報告書「今後の障害児支援の在り方について」において、「障害児支援の内容については、各事業所において理念や目標に基づく独自性や創意工夫も尊重されるものである。その一方で、支援の一定の質を担保するための全国共通の枠組みが必要であるため、障害児への支援の基本的事項や職員の専門性の確保等を定めたガイドラインの策定が必要」との提言を受けた。これを受けて、平成27年4月に、提供される支援の内容が多種多様で、支援の質の観点からも大きな開きがあるとの指摘がなされている状況にあった放課後等デイサービスについて、「放課後等デイサービスガイドライン」を策定した。

児童発達支援については、平成24年4月では、約1,700カ所の事業所数であったが、平成29年1月には、約4,700カ所となっており、この事業所数や利用者数は、放課後等デイサービスに次いで増加している状況にある。

このような状況にある中、児童発達支援についても、支援の質の確保及びその向上を図り、障害のある子ども本人やその家族のために児童発達支援を提供していく必要がある。このため、今般、児童発達支援が提供すべき支援の内容を示し、支援の一定の質を担保するための全国共通の枠組みを示すために、「児童発達支援ガイドライン」として策定し、公表するものである。

なお、本ガイドラインは、児童発達支援を実施するに当たって必要となる基本的事項を示すものである。各事業所には、本ガイドラインの内容を踏まえつつ、各事業所の実情や個々の子どもの状況に応じて不断に創意工夫を図り、提供する支援の質の向上に努めることが求められる。また、各事業所の不断の努力による支援の質の向上とあいまって、今後も本ガイドラインの見直しを行い、本ガイドラインの内容も向上させていくものである。

1 目的

(1)この「児童発達支援ガイドライン」は、児童発達支援について、障害のある子ども本人やその家族に対して質の高い児童発達支援を提供するため、児童発達支援センター及び児童発達支援事業所(以下「児童発達支援センター等」という。)における児童発達支援の内容や運営及びこれに関連する事項を定めるものである。

(2)各児童発達支援センター等は、このガイドラインにおいて規定される児童発達支援の内容等に係る基本的な事項等を踏まえ、各児童発達支援センター等の実情に応じて創意工夫を図り、その機能及び質の向上を図らなければならない。

2 障害児支援の基本理念

(1)障害のある子ども本人の最善の利益の保障

児童福祉法(昭和22年法律第164号)第1条において、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」と規定され、児童福祉法第2条第1項において、

「全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。」と規定されている。このように、障害のある子どもの支援を行うに当たっては、その気づきの段階から、障害の種別にかかわらず、子ども本人の意思を尊重し、子ども本人の最善の利益を考慮することが必要である。

(2)地域社会への参加・包容(インクルージョン)の推進と合理的配慮

障害者権利条約では、障害を理由とするあらゆる差別(「合理的配慮」の不提供を含む。)の禁止や障害者の地域社会への参加・包容(インクルージョン)の促進等が定められており、障害のある子どもの支援に当たっては、子ども一人一人の障害の状態及び発達の過程・特性等に応じ、合理的な配慮が求められる。

また、地域社会で生活する平等の権利の享受と、地域社会への参加・包容(インクルージョン)の考え方に立ち、障害の有無にかかわらず、全ての子どもが共に成長できるようにしていくことが必要である。

障害のある子どもへの支援に当たっては、移行支援を含め、可能な限り、地域の保育、教育等の支援を受けられるようにしていくとともに、同年代の子どもとの仲間作りを図っていくことが求められる。

(3)家族支援の重視

障害のある子どもへの支援を進めるに当たっては、障害のある子どもを育てる家族への支援が重要である。障害のある子どもに対する各種の支援自体が、家族への支援の意味を持つものであるが、子どもを育てる家族に対して、障害の特性や発達の各段階に応じて子どもの「育ち」や「暮らし」を安定させることを基本に置いて丁寧な支援を行うことにより、子ども本人にも良い影響を与えることが期待できる。

(4)障害のある子どもの地域社会への参加・包容(インクルージョン)を子育て支援において推進するための後方支援としての専門的役割

障害のある子どもの地域社会への参加・包容(インクルージョン)を進めるため、障害のない子どもを含めた集団の中での育ちをできるだけ保障する視点が求められる。このため、専門的な知識・技術に基づく障害のある子どもに対する支援を、一般的な子育て支援をバックアップする後方支援として位置づけ、保育所等訪問支援等を積極的に活用し、子育て支援における育ちの場において、障害のある子どもの支援に協力できるような体制づくりを進めていくことが必要である。

また、障害のある子どもの健やかな育成のためには、子どものライフステージに沿って、地域の保健、医療、障害福祉、保育、教育、就労支援等の関係機関が連携を図り、切れ目の無い一貫した支援を提供する体制の構築を図る必要がある。

3 児童発達支援の役割

(1)児童発達支援は、児童福祉法第6条の2の2第2項の規定に基づき、障害のある子どもに対し、児童発達支援センター等において、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供するものである。

(2)児童発達支援センター等は、児童福祉法等の理念に基づき、障害のある子どもの最善の利益を考慮して、児童発達支援を提供しなければならない。

(3)児童発達支援センター等は、主に未就学の障害のある子ども又はその可能性のある子どもに対し、個々の障害の状態及び発達の過程・特性等に応じた発達上の課題を達成させていくための本人への発達支援を行うほか、子どもの発達の基盤となる家族への支援に努めなければならない。また、地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進するため、保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、特別支援学校(主に幼稚部及び小学部)等(以下「保育所等」という。)と連携を図りながら支援を行うとともに、専門的な知識・経験に基づき、保育所等の後方支援に努めなければならない。

(4)特に、児童発達支援センターは、地域における中核的な支援機関として、保育所等訪問支援や障害児相談支援、地域生活支援事業における巡回支援専門員整備や障害児等療育支援事業等を実施することにより、地域の保育所等に対し、専門的な知識・技術に基づく支援を行うよう努めなければならない。

(5)児童発達支援の目的を達成するため、専門性を有する職員が、保護者や地域の様々な社会資源との緊密な連携のもとで、障害のある子どもの状態等を踏まえて支援を行わなければならない。

4 児童発達支援の原則

(1)児童発達支援の目標

  • ア 乳幼児期は、障害の有無に関わらず、子どもの生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期である。このため、児童発達支援センター等においては、子どもが充実した毎日を過ごし、望ましい未来を作り出す力の基礎を培うために、子どもの障害の状態及び発達の過程・特性等に十分配慮しながら、子どもの成長を支援する必要がある。
  • イ 児童発達支援においては、障害の気づきの段階から継続的な支援を行い、将来の子どもの発達・成長の姿を見通しながら、日常生活や社会生活を円滑に営めるよう、今、どのような支援が必要かという視点を持ち、子どもの自尊心や主体性を育てつつ発達上の課題を達成させることが必要である。
  • ウ 児童発達支援センター等は、通所する子どもの保護者に対し、その意向を受け止め、子どもと保護者の安定した関係に配慮し、児童発達支援センター等の特性や児童発達支援に携わる職員の専門性を活かして、支援に当たる必要がある。

(2)児童発達支援の方法

児童発達支援の目標を達成するために、児童発達支援に携わる職員は、次の事項に留意して、障害のある子どもに対し、児童発達支援を行わなければならない。

  • ア 一人一人の子どもの状況や家庭及び地域社会での生活の実態について、アセスメントを適切に行い、子どもと保護者のニーズや課題を客観的に分析した上で支援に当たるとともに、子どもが安心感と信頼感を持って活動できるよう、子どもの主体としての思いや願いを受け止めること。
  • イ 子どもの生活リズムを大切にし、健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境や、自己を十分に発揮できる環境を整えること。
  • ウ 一人一人の子どもの発達や障害の特性について理解し、発達の過程に応じて、個別又は集団における活動を通して支援を行うこと。その際、子どもの個人差に十分配慮すること。
  • エ 子どもの相互の関係作りや互いに尊重する心を大切にし、集団における活動を効果あるものにするよう援助すること。
  • オ 子どもが自発的、意欲的に関われるような環境を構成し、子どもの主体的な活動や子ども相互の関わりを大切にすること。特に、乳幼児期にふさわしい体験が得られるように支援を行うこと。
  • カ 子どもの成長は、「遊び」を通して促されることから、周囲との関わりを深めたり、表現力を高めたりする「遊び」を通し、職員が適切に関わる中で、豊かな感性や表現する力を養い、創造性を豊かにできるように、具体的な支援を行うこと。
  • キ 単に運動機能や検査上に表される知的能力にとどまらず、「育つ上での自信や意欲」、「発話だけに限定されないコミュニケーション能力の向上」、「自己選択、自己決定」等も踏まえながら、子どものできること、得意なことに着目し、それを伸ばす支援を行うこと。
  • ク 一人一人の保護者の状況やその意向を理解し、受容し、それぞれの親子関係や家庭生活等に配慮しながら、様々な機会をとらえ、適切に援助すること。

(3)児童発達支援の環境

児童発達支援の環境には、児童発達支援に携わる職員や子ども等の人的環境、施設や遊具等の物的環境、更には自然や社会の事象等がある。

児童発達支援センター等は、こうした人、物、場等の環境が相互に関連し合い、子どもの生活が豊かなものとなるよう、次の事項に留意しつつ、計画的に環境を構築し、工夫して児童発達支援を行わなければならない。

  • ア 子ども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んでいくことができるよう配慮すること。
  • イ 子どもの活動が豊かに展開されるよう、児童発達支援センター等の設備や環境を整え、児童発達支援センター等の保健的環境や安全の確保等に努めること。
  • ウ 子どもが生活する空間は、温かな親しみとくつろぎの場となるとともに、障害の特性を踏まえ、時間や空間を本人にわかりやすく構造化した環境の中で、生き生きと活動できる場となるように配慮すること。
  • エ 子どもが人と関わる力を育てていくため、子ども自らが周囲の子どもや大人と関わっていくことができる環境を整えること。

(4)児童発達支援の社会的責任

  • ア 児童発達支援センター等は、子どもの人権に十分配慮することを徹底するとともに、子ども一人一人の人格を尊重して児童発達支援を行わなければならない。
  • イ 児童発達支援センター等は、地域社会との交流や連携を図り、保護者や地域社会に、当該児童発達支援センター等が行う児童発達支援の内容を適切に説明しなければならない。
  • ウ 児童発達支援センター等は、常に計画に基づいて提供される支援の内容や役割分担について定期的に点検し、その質の向上が図られるようにしなければならない。
  • エ 児童発達支援センター等は、通所する子ども等の個人情報を適切に取り扱うとともに、保護者の相談や申入れ等に対し、その解決を図らなければならない。

5 障害のある子どもへの支援

乳幼児期は、子どもの成長が著しく、障害の有無に関わらず、周囲との信頼関係に支えられた生活の中で、適切な環境や活動を通じて子どもの健全な心身の発達を図りつつ、生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて重要な時期である。

このため、児童発達支援に携わる職員は、子どもの障害の状態及び発達の過程・特性等を理解し、発達及び生活の連続性に配慮して児童発達支援を行わなければならない。また、子ども自身の力を十分に認め、一人一人の障害の状態及び発達の過程・特性等に応じた適切な援助及び環境構成を行うことが重要である。

また、乳児から3歳未満の障害のある子どもの場合には、健康状態や生活習慣の育成に十分な配慮を行いながら、子どもの心身の発達に即して支援を行うとともに、親子関係の形成期にあることを踏まえ、保護者の子どもの障害特性の理解等に配慮しながら支援を行う必要がある。

3歳以上の障害のある子どもの場合には、個の成長と、子ども相互の関係や協同的な活動が促されるよう配慮しながら支援を行うとともに、地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進する観点から、できる限り多くの子どもが、保育所や認定こども園、幼稚園の利用に移行し、障害の有無に関わらず成長できるように、児童発達支援センター等においては児童発達支援計画を組み立てる必要がある。

第2章 児童発達支援の提供すべき支援

児童発達支援に携わる職員は、保育所等との連携及び移行支援を行うために、保育所保育指針(平成20年厚生労働省告示第141号。以下「保育所保育指針」という。)の「養護」のねらい及び内容を理解するとともに、次の事項に留意しながら、支援にあたる必要がある。

  • 一人一人の子どもの健康状態や発育及び発達状態を的確に把握する。また、家庭環境や生活の実態を知り、社会的養護等の支援の必要性を感じる場合は、速やかに適切に対応する。
  • 家庭との連携を密にし、主治医や嘱託医、協力医療機関と連携を図りながら、保健的で安全な支援環境の維持及び向上に努める。
  • 清潔で安全な環境を整え、適切な援助や応答的な関わりを通して子どもの生理的欲求を満たしていく。また、家庭と協力しながら、適切な生活リズムが作られていくようにする。
  • 適度な運動と休息を取ることができるようにする。また、食事、衣類の着脱、排泄、身の回りを清潔にすることなどについて、子どもが意欲的に生活できるよう適切に援助する。
  • 子どもの欲求を適切に満たしながら、応答的な触れあいや言葉がけを行う。また、子どもの気持ちを受容し、共感しながら、継続的な信頼関係を築いていく。
  • 人との信頼関係を基盤に、主体的な活動、自発性や探索意欲等を高め、自信を持つことができるよう成長の過程を見守り、適切に働きかける。

また、児童発達支援センター等においては、保育所保育指針の「健康」、「人間関係」、「環境」、「言葉」及び「表現」のねらい及び内容に準じて支援にあたるとともに、障害のある子どもが家庭や地域社会で健やかに育つために、「児童発達支援」を提供するものとする。

この児童発達支援は、大別すると、「発達支援(本人支援及び移行支援)」、「家族支援」及び「地域支援」からなり、障害のある子どもの個々のニーズに対し、支援ごとのねらいを達成するために、それに必要な支援内容を具体的に提供しながら、総合的に支援を行うものである。

また、「本人支援」の各領域に示すねらい及び支援内容は、子どもが家庭や地域社会における生活を通じ、様々な体験を積み重ねる中で、相互に関連を持ちながら達成に向かうものである。このため、「本人支援」だけでなく、「移行支援」や「家族支援」、「地域支援」を通して、育ちの環境を整えていくことが極めて重要である。

さらに、発達支援により得られた、障害のある子どもが健やかに育っていくための方法について、家庭や地域に伝えていくことも重要である。

なお、幼稚園教育要領、特別支援学校幼稚部教育要領及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領のねらい及び内容についても理解し、支援に当たることが重要である。特に、特別支援学校幼稚部教育要領の「自立活動」は、障害のある幼児がその障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服のための指導について示していることに留意する必要がある。

1 児童発達支援の内容

児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。具体的には、障害のある子どものニーズに応じて、「発達支援(本人支援及び移行支援)」、「家族支援」及び「地域支援」を総合的に提供していくものである。

また、児童発達支援は、障害のある子どもの個々のニーズにあった質の高い支援の提供が必要であり、そのためには、児童発達支援センター等において、子どもそれぞれに児童発達支援計画を作成し、これに基づき、標準的な支援を提供していくものである。

この児童発達支援計画の作成に当たっては、標準化されたツールの活用も含め、子どもの多様なニーズを総合的に把握するためにアセスメントを行うことが必要である。この際は、子ども本人の発達等の状況や家族・地域社会の状況のみならず、子どもや家族の意向を適切に把握することが必要である。

このアセスメントを踏まえ、児童発達支援計画に、子ども本人のニーズに応じた「支援目標」を設定し、それを達成するために必要な支援について、「発達支援(本人支援及び移行支援)」、「家族支援」及び「地域支援」で示す支援内容から子どもの支援に必要な項目を適切に選択し、その上で、具体的な支援内容を設定するものである。なお、選択した支援内容の項目については、具体的な支援内容と共に、児童発達支援計画に明記することが必要である。また、「いつ」、「どこで」、「誰が」、「どのように」、「どのくらい」支援するかということが、児童発達支援計画の中に常に明確になっていることが必要である。

適切な支援を提供するためには、適時のモニタリングにより、必要な支援の検討・改善を行うことが必要である。このためには、児童発達支援計画の見直し等を行う支援の一連の流れ、すなわちPDCAサイクル(Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)で構成されるプロセス)が必要である。

なお、これらの支援の結果は、記録・評価され、次の支援に活かしていくものである。

(1)発達支援

ア 本人支援

「本人支援」は、障害のある子どもの発達の側面から、心身の健康や生活に関する領域「健康・生活」、運動や感覚に関する領域「運動・感覚」、認知と行動に関する領域「認知・行動」、言語・コミュニケーションの獲得に関する領域「言語・コミュニケーション」、人との関わりに関する領域「人間関係・社会性」の5領域にまとめられるが、これらの領域の支援内容は、お互いに関連して成り立っており、重なる部分もある。
また、この「本人支援」の大きな目標は、障害のある子どもが、将来、日常生活や社会生活を円滑に営めるようにするものである。また、児童発達支援センター等で行われる本人支援は、家庭や地域社会での生活に活かされるために行われるものであり、保育所等に引き継がれていくものである。

  • (ア)健康・生活
    1. ねらい
      • (a)健康状態の維持・改善
      • (b)生活のリズムや生活習慣の形成
      • (c)基本的生活スキルの獲得
    2. 支援内容
      • (a)健康状態の把握
        健康な心と体を育て自ら健康で安全な生活を作り出すことを支援する。また、健康状態の常なるチェックと必要な対応を行う。その際、意思表示が困難である子どもの障害の特性及び発達の過程・特性等に配慮し、小さなサインから心身の異変に気づけるよう、きめ細かな観察を行う。
      • (b)健康の増進
        睡眠、食事、排泄等の基本的な生活のリズムを身に付けられるよう支援する。また、健康な生活の基本となる食を営む力の育成に努めるとともに、楽しく食事ができるよう、口腔内機能・感覚等に配慮しながら、咀嚼・嚥下、姿勢保持、自助具等に関する支援を行う。さらに、病気の予防や安全への配慮を行う。
      • (c)リハビリテーションの実施
        日常生活や社会生活を営めるよう、それぞれの子どもに適した身体的、精神的、社会的訓練を行う。
      • (d)基本的生活スキルの獲得
        身の回りを清潔にし、食事、衣類の着脱、排泄等の生活に必要な基本的技能を獲得できるよう支援する。
      • (e)構造化等により生活環境を整える
        生活の中で、さまざまな遊びを通して学習できるよう環境を整える。
        また、障害の特性に配慮し、時間や空間を本人に分かりやすく構造化する。
  • (イ)運動・感覚
    1. ねらい
      • (a)姿勢と運動・動作の向上
      • (b)姿勢と運動・動作の補助的手段の活用
      • (c)保有する感覚の総合的な活用
    2. 支援内容
      • (a)姿勢と運動・動作の基本的技能の向上
        日常生活に必要な動作の基本となる姿勢保持や上肢・下肢の運動・動作の改善及び習得、関節の拘縮や変形の予防、筋力の維持・強化を図る。
      • (b)姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用
        姿勢の保持や各種の運動・動作が困難な場合、姿勢保持装置など、様々な補助用具等の補助的手段を活用してこれらができるよう支援する。
      • (c)身体の移動能力の向上
        自力での身体移動や歩行、歩行器や車いすによる移動など、日常生活に必要な移動能力の向上のための支援を行う。
      • (d)保有する感覚の活用
        保有する視覚、聴覚、触覚等の感覚を十分に活用できるよう、遊び等を通して支援する。
      • (e)感覚の補助及び代行手段の活用
        保有する感覚器官を用いて状況を把握しやすくするよう眼鏡や補聴器等の各種の補助機器を活用できるよう支援する。
      • (f)感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)への対応
        感覚や認知の特性(感覚の過敏や鈍麻)を踏まえ、感覚の偏りに対する環境調整等の支援を行う。
  • (ウ)認知・行動
    1. ねらい
      • (a)認知の発達と行動の習得
      • (b)空間・時間、数等の概念形成の習得
      • (c)対象や外部環境の適切な認知と適切な行動の習得
    2. 支援内容
      • (a)感覚や認知の活用
        視覚、聴覚、触覚等の感覚を十分活用して、必要な情報を収集して認知機能の発達を促す支援を行う。
      • (b)知覚から行動への認知過程の発達
        環境から情報を取得し、そこから必要なメッセージを選択し、行動につなげるという一連の認知過程の発達を支援する。
      • (c)認知や行動の手掛かりとなる概念の形成
        物の機能や属性、形、色、音が変化する様子、空間・時間等の概念の形成を図ることによって、それを認知や行動の手掛かりとして活用できるよう支援する。
      • (d)数量、大小、色等の習得
        数量、形の大きさ、重さ、色の違い等の習得のための支援を行う。
      • (e)認知の偏りへの対応
        認知の特性を踏まえ、自分に入ってくる情報を適切に処理できるよう支援し、認知の偏り等の個々の特性に配慮する。また、こだわりや偏食等に対する支援を行う。
      • (f)行動障害への予防及び対応
        感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防、及び適切行動への対応の支援を行う。
  • (エ)言語・コミュニケーション
    1. ねらい
      • (a)言語の形成と活用
      • (b)言語の受容及び表出
      • (c)コミュニケーションの基礎的能力の向上
      • (d)コミュニケーション手段の選択と活用
    2. 支援内容
      • (a)言語の形成と活用
        具体的な事物や体験と言葉の意味を結びつける等により、体系的な言語の習得、自発的な発声を促す支援を行う。
      • (b)受容言語と表出言語の支援
        話し言葉や各種の文字・記号等を用いて、相手の意図を理解したり、自分の考えを伝えたりするなど、言語を受容し表出する支援を行う。
      • (c)人との相互作用によるコミュニケーション能力の獲得
        個々に配慮された場面における人との相互作用を通して、共同注意の獲得等を含めたコミュニケーション能力の向上のための支援を行う。
      • (d)指差し、身振り、サイン等の活用
        指差し、身振り、サイン等を用いて、環境の理解と意思の伝達ができるよう支援する。
      • (e)読み書き能力の向上のための支援
        発達障害の子どもなど、障害の特性に応じた読み書き能力の向上のための支援を行う。
      • (f)コミュニケーション機器の活用
        各種の文字・記号、絵カード、機器等のコミュニケーション手段を適切に選択、活用し、環境の理解と意思の伝達が円滑にできるよう支援する。
      • (g)手話、点字、音声、文字等のコミュニケーション手段の活用
        手話、点字、音声、文字、触覚、平易な表現等による多様なコミュニケーション手段を活用し、環境の理解と意思の伝達ができるよう支援する。
  • (オ)人間関係・社会性
    1. ねらい
      • (a)他者との関わり(人間関係)の形成
      • (b)自己の理解と行動の調整
      • (c)仲間づくりと集団への参加
    2. 支援内容
      • (a)アタッチメント(愛着行動)の形成
        人との関係を意識し、身近な人と親密な関係を築き、その信頼関係を基盤として、周囲の人と安定した関係を形成するための支援を行う。
      • (b)模倣行動の支援
        遊び等を通じて人の動きを模倣することにより、社会性や対人関係の芽生えを支援する。
      • (c)感覚運動遊びから象徴遊びへの支援
        感覚機能を使った遊びや運動機能を働かせる遊びから、見立て遊びやつもり遊び、ごっこ遊び等の象徴遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する。
      • (d)一人遊びから協同遊びへの支援
        周囲に子どもがいても無関心である一人遊びの状態から並行遊びを行い、大人が介入して行う連合的な遊び、役割分担したりルールを守って遊ぶ協同遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援する。
      • (e)自己の理解とコントロールのための支援
        大人を介在して自分のできること、できないことなど、自分の行動の特徴を理解するとともに、気持ちや情動の調整ができるように支援する。
      • (f)集団への参加への支援
        集団に参加するための手順やルールを理解し、遊びや集団活動に参加できるよう支援する。
イ 移行支援

地域社会で生活する平等の権利の享受と、地域社会への参加・包容(インクルージョン)の考え方に立ち、障害の有無にかかわらず、全ての子どもが共に成長できるよう、障害のある子どもに対する「移行支援」を行うことで、可能な限り、地域の保育、教育等の支援を受けられるようしていくとともに、同年代の子どもとの仲間作りを図っていくことが必要である。

また、児童発達支援においては、障害のある子どもの発達の状況や家族の意向をアセスメントし、地域において保育・教育等を受けられるように保育所等への支援を行う「後方支援」の役割が求められている。

  • (ア)ねらい
    1. 保育所等への配慮された移行支援
    2. 移行先の保育所等との連携(支援内容等の共有や支援方法の伝達)
    3. 移行先の保育所等への支援と支援体制の構築
    4. 同年代の子どもとの仲間作り
  • (イ)支援内容
    1. 具体的な移行を想定した子どもの発達の評価
    2. 合理的配慮を含めた移行に当たっての環境の評価
    3. 具体的な移行先との調整
    4. 家族への情報提供や移行先の見学調整
    5. 移行先との援助方針や支援内容等の共有、支援方法の伝達
    6. 子どもの情報・親の意向等についての移行先への伝達
    7. 併行通園の場合は、利用日数や時間等の調整
    8. 移行先の受け入れ体制づくりへの協力
    9. 相談支援等による移行先ヘの支援
    10. 地域の保育所等や子育て支援サークルとの交流
ウ 支援に当たっての配慮事項

児童発達支援に携わる職員は、障害のある子どもの発達の状態及び発達の過程・特性等を理解し、一人一人の子どもの障害種別、障害の特性及び発達の状況に応じた支援を行うことが必要である。

また、障害種別に応じて、設備・備品への配慮のほか、子どもや保護者との意思の疎通、情報伝達のための手話等による配慮が必要である。

  • 視覚に障害のある子どもに対しては、聴覚、触覚及び保有する視覚等を十分に活用しながら、様々な体験を通して身近な物の存在を知り、興味・関心や意欲を育てていくことが必要である。また、ボディイメージを育て、身の回りの具体的な事物・事象や動作と言葉とを結び付けて基礎的な概念の形成を図るようにすることが必要である。
  • 聴覚に障害のある子どもに対しては、保有する聴覚や視覚的な情報等を十分に活用して言葉の習得と概念の形成を図る指導を進める必要がある。また、言葉を用いて人との関わりを深めたり、日常生活に必要な知識を広げたりする態度や習慣を育てる必要がある。
  • 知的障害のある子どもに対しては、活動内容や環境の設定を創意工夫し、活動への意欲を高めて、発達を促すようにすることが必要である。また、ゆとりや見通しをもって活動に取り組めるよう配慮するとともに、周囲の状況に応じて安全に行動できるようにすることが必要である。
  • 発達障害のある子どもに対しては、予定等の見通しをわかりやすくしたり、感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)に留意し、安心できる環境づくりが必要である。また、具体的又は視覚的な手段を用いながら、活動や場面の理解ができるようにすることや、人とかかわる際の具体的な方法や手段を身に付けることが必要である。
  • 精神的に強い不安や緊張を示す子どもに対しては、活動内容や環境の設定を創意工夫し、情緒の程よい表出を促すとともに、人との関わりを広げていけるようにすることが必要である。また、少人数でゆったりと落ち着いた受容的な環境を用意することが必要である。
  • 肢体不自由の子どもに対しては、幼児の身体の動きや健康の状態等に応じ、可能な限り体験的な活動を通して経験を広げるようにすることが必要である。また、興味や関心をもって、進んで身体を動かそうとしたり、表現したりするような環境を創意工夫することが必要である。
  • 病弱・身体虚弱の子どもに対しては、病気の状態等に十分に考慮し、活動と休息のバランスを取りながら、様々な活動が展開できるようにすることが必要である。心臓病等により乳幼児期に手術等を受けている子どもは、治療過程で運動や日常生活上での様々な制限を受けたり、同年代の子どもとの関わりが少なくなるなど、学習の基礎となる経験が不足することがある。小児慢性特定疾病や難病等の子どもを含め、子どもが可能な限り体験的な活動を経験できるよう、児童発達支援センター等は、主治医からの指示・助言や保護者の情報を3者で共有しながら支援を行うことが必要である。
  • 医療的ケアが必要な子どもや重症心身障害のある子どもに対しては、心身や健康の状態、病気の状態等を十分に考慮し、活動と休息のバランスを取りながら、様々な活動が展開できるようにすることが必要である。また、健康状態の維持・改善に必要な生活習慣を身に付けることができるようにすることが必要である。さらに、子どもが可能な限り体験的な活動を経験できるよう、児童発達支援センター等は、主治医からの指示・助言や保護者の情報を3者で共有しながら支援を行うことが必要である。
  • 重症心身障害のある子どもに対しては、重度の知的障害及び重度の肢体不自由があるため、意思表示の困難さに配慮し、子どもの小さなサインを読み取り、興味や関心を持った体験的な活動の積み重ねができるようにすることが必要である。また、筋緊張を緩和する環境づくりと、遊び、姿勢管理により、健康状態の維持・改善を支えることが必要である。
  • 複数の種類の障害を併せ有する子どもに対しては、それぞれの障害の特性に配慮した支援が必要である。

(2)家族支援

障害のある子どもを育てる家族に対して、障害の特性に配慮し、子どもの「育ち」や「暮らし」を安定させることを基本に、丁寧な「家族支援」を行うことが必要である。

特に、保護者が子どもの発達を心配する気持ちを出発点とし、障害があっても子どもの育ちを支えていける気持ちが持てるようになるまでの過程においては、関係者が十分な配慮を行い、日々子どもを育てている保護者の思いを尊重し、保護者に寄り添いながら、子どもの発達支援に沿った支援が必要である。

ア ねらい
  • (ア)家族からの相談に対する適切な助言やアタッチメント形成(愛着行動)等の支援
  • (イ)家庭の子育て環境の整備
  • (ウ)関係者・関係機関との連携による支援
イ 支援内容
  • (ア)子どもに関する情報の提供と定期的な支援調整
  • (イ)子育て上の課題の聞きとりと必要な助言
  • (ウ)子どもの発達上の課題についての気づきの促しとその後の支援
  • (エ)子どもを支援する輪を広げるための橋渡し
  • (オ)相談支援専門員との定期的な支援会議や支援計画の調整
  • (カ)関係者・関係機関の連携による支援体制の構築
  • (キ)家族支援プログラム(ペアレント・トレーニング等)の実施
  • (ク)心理的カウンセリングの実施
  • (ケ)家族の組織化と定期的な面会
  • (コ)兄弟姉妹等の支援
ウ 支援に当たっての配慮事項
  • 家族支援は、家族が安心して子育てを行うことができるよう、さまざまな家族の負担を軽減していくための物理的及び心理的支援等を行うことである。
  • 家族支援は、大きなストレスや負担にさらされている母親が中心となる場合が多いが、父親や兄弟姉妹、さらには祖父母など、家族全体を支援していく観点が必要である。
  • 家族が子どもの障害の特性等を理解していくための支援となるが、理解のプロセス及び態様は、それぞれの家族で異なることを理解することが重要である。
  • 特に、子どもの障害の特性等の理解の前段階として、「気づき」の支援も重要な家族支援の内容であり、個別性に配慮して慎重に行うことが大切である。
  •  家族支援において明らかとなってくる虐待(ネグレクトを含む)の疑いや心理カウンセリングの必要性など、専門的な支援が必要な場合は、適切な対応が求められる。
  • 家族支援は、必要に応じて、障害児相談支援事業所、他の児童発達支援センターや児童発達支援事業所、居宅介護(ホームヘルプ)や短期入所(ショートステイ)等を実施する障害福祉サービス事業所、発達障害者支援センター、児童相談所、専門医療機関、保健所等と緊密な連携を行って実施することが必要である。

(3)地域支援

障害のある子どもの地域社会への参加・包容(インクルージョン)を推進するため、児童発達支援センター等は、保育所等の子育て支援機関等の関係機関との連携を進め、地域の子育て環境や支援体制の構築を図るための「地域支援」を行うことが必要である。

ア ねらい
  • (ア)地域における連携の核としての役割
  • (イ)地域の子育て環境の構築
  • (ウ)地域の支援体制の構築
イ 支援内容
  • (ア)児童発達支援センター等
    • (a)保育所等の子育て支援機関との連携
    • (b)医療機関、保健所、児童相談所等の専門機関との連携
    • (c)児童委員、主任児童委員等地域の関係者等との連携
    • (d)地域支援の体制の構築のための会議の開催
    • (e)個別のケース検討のための会議の開催
    • (f)(自立支援)協議会等への参加
    • (g)要保護児童対策地域協議会等への参加
    • (h)児童発達支援センター等に対する理解促進のための地域集会等への積極的な参加
  • (イ)特に児童発達支援センター
    • (a)連携・ネットワークの中核機関としての役割
    • (b)保育所等訪問支援の実施
    • (c)障害児等療育支援事業、巡回支援専門員整備事業の実施
ウ 支援に当たっての配慮事項
  • 地域支援は、支援を利用する子どもが地域で適切な支援を受けられるよう関係機関等と連携することのみならず、地域全体の子育て支援力を高めるためのネットワークを普段から構築しておくという視点が必要である。
  • そのためには、支援を利用する個々の子どもに対する個別の支援会議から生じた課題等を地域の「(自立支援)協議会」において検討するなど、地域全体の課題として取り組んでいくことが重要である。
  • 地域の支援体制を構築していくためには、平成26年7月の障害児支援の在り方に関する検討会の報告書「今後の障害児支援の在り方について~「発達支援」が必要な子どもの支援はどうあるべきか~」において示された、「地域における縦横連携のイメージ」や、都道府県域、障害保健福祉圏域、市町村域等における重層的な支援体制のイメージが参考となる。

第3章児童発達支援計画の作成及び評価

1 障害児支援利用計画との整合性のある児童発達支援計画の作成と児童発達支援の実施(障害児相談支援事業所との連携)

児童発達支援センター等による児童発達支援の適切な実施に当たっては、障害のある子どもや保護者の生活全般における支援ニーズとそれに基づいた総合的な支援方針等を把握した上で、具体的な支援内容を検討し実施する必要がある。そのためには、障害児相談支援事業者と連携し、障害児支援利用計画との整合性のある児童発達支援計画の作成と児童発達支援の実施が重要である。なお、障害児支援利用計画と児童発達支援計画は、個々の子どもの支援における合理的配慮の根拠となるものである。

(1)障害児相談支援事業者による障害児支援利用計画案の作成と支給決定

  • 障害児相談支援事業に従事する相談支援専門員は、児童発達支援センター等の利用を希望する子どもや保護者の求めに応じて障害児支援利用計画案の作成を行う。
  • 相談支援専門員は、子どもや保護者との面談により、子どもの心身の状況や置かれている環境、日常生活の状況、現に受けている支援、支援の利用の意向等を子どもや保護者から聞き取った上で、それらに基づいたアセスメントによりニーズを明らかにし、総合的な援助方針を提案する。
  • そして、子どもや家族の意向と総合的な援助方針に基づき、個々の子どもの障害の状態及び発達の過程・特性等に応じた発達上の課題を達成させ、生活全般のニーズを充足するために、必要な支援を検討する。
  • 乳幼児期の障害のある子どもへの支援には、児童福祉法に基づき、通所により発達支援を行う「児童発達支援」や「医療型児童発達支援」の他、重度の障害等により外出が著しく困難な障害児に対し、居宅を訪問して発達支援を行う「居宅訪問型児童発達支援」(平成30年4月施行予定)、保育所等を利用している障害児に対し支援を行う「保育所等訪問支援」がある。また、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に基づき、居宅で入浴や排泄、食事の介護等を行う居宅介護(ホームヘルプ)や、自宅で介護する人が病気の場合等に、短期間、施設で入浴や排泄、食事の介護等を行う短期入所(ショートステイ)等の障害福祉サービスが利用できる。
  • 障害児支援利用計画案は、これらの支援の中から、必要な支援を選択又は組み合わせ、個々の支援の目的や内容及び量について検討し、子ども又は保護者の同意のもと作成するものである。
  • 市町村は、作成された障害児支援利用計画案を勘案し、児童発達支援センター等の利用についての支給決定を行うこととなる。

(2)サービス担当者会議の開催と障害児支援利用計画の確定

  • 相談支援専門員は、市町村による支給決定後、子どもや保護者の希望を踏まえて、支援を提供する事業者の調整を行い、それらの事業者等を集めたサービス担当者会議を開催する。児童発達支援センター等を利用する場合、サービス担当者会議には、子どもや家族、児童発達支援センター等の児童発達支援管理責任者や従業者、他の支援等を利用している場合にはその担当者、その他必要に応じて、子どもや保護者への支援に関係する者が招集される。
  • サービス担当者会議では、障害児支援利用計画案の作成に至る経緯、子どもや保護者の意向と総合的な援助方針、ニーズと支援目標、支援内容等について参加者で共有する。
  • サービス担当者会議の参加者は、障害児支援利用計画案の内容について意見交換を行うが、その際、児童発達支援センター等の担当者は、児童発達支援の専門的な見地からの意見を述べることが求められる。また、障害児支援利用計画案に位置づけられた当該事業所に期待される役割を確認するとともに、障害のある子どもが、地域の中で他の子どもと共に成長できるようにするため、子どもの最善の利益の観点から、支援の提供範囲にとどまらない意見を述べることが重要である。
  • 相談支援専門員は、参加者による意見交換を受けて支援の提供の目的や内容を調整し、各担当者の役割を明確にした上で、子ども又は保護者の同意のもと障害児支援利用計画を確定する。確定した障害児支援利用計画は、子どもや保護者を始め、支給決定を担当する市町村、児童発達支援センター等の支援を提供する者に配付され共有される。

(3)児童発達支援計画に基づく児童発達支援の実施

  • 児童発達支援センター等の児童発達支援計画は、児童発達支援管理責任者が、障害児支援利用計画における総合的な援助方針や、当該事業所に対応を求められるニーズや支援目標及び支援内容を踏まえて、児童発達支援の具体的な内容を検討し、作成する。
  • 児童発達支援センター等は、作成された児童発達支援計画に基づき児童発達支援を実施する。

(4)障害児相談支援事業者によるモニタリングと障害児支援利用計画の見直し

  • 一定期間毎に、相談支援専門員は、子どもと保護者に対する面談により、障害児支援利用計画に基づいた支援の提供状況や効果、支援に対する満足度についてモニタリングを実施する。また、各事業者から支援の提供状況や効果について確認した結果、現在の支援がニーズの充足のために適切でなかったり、当初のニーズが充足してニーズが変化していたり、新たなニーズが確認された場合は、必要に応じてサービス担当者会議を開催し、障害児支援利用計画を見直す。
  • サービス担当者会議において、児童発達支援センター等の児童発達支援管理責任者は、その時点までの児童発達支援の提供状況を踏まえて、課題への達成度や気づきの点等の情報を積極的に述べ、必要に応じた障害児支援利用計画の見直しに寄与することが重要である。そのためには、児童発達支援センター等の設置者・管理者は、児童発達支援管理責任者や従業者のうち、当該子どもの状況に精通した最もふさわしい者を参画させなければならない。
  • 障害児支援利用計画の内容が見直され、総合的な支援方針や児童発達支援センター等に求められる役割が変更された場合には、児童発達支援管理責任者は、必要に応じて児童発達支援計画を変更し、適切な児童発達支援を実施する。

(5)その他の連携について

  • 児童発達支援センター等による児童発達支援は、子どもや保護者への生活全般における支援の一部を継続的に実施するものである。このため、日々の支援を担う児童発達支援センター等は、子どもや保護者のニーズの変化を細やかに把握することができる。また、継続的な関わりは、専門的なアセスメントを深め、潜在的なニーズの顕在化にもつながる。
  • しかし、それらのニーズは、児童発達支援センター等のみで対応できるものばかりではなく、他の支援機関による対応が必要な場合もある。その場合は適切な支援が調整され提供されるように、速やかに障害児相談支援事業者などの関係機関と連絡を取り合う必要がある。

以上のように、障害児相談支援事業者と児童発達支援センター等の関係性は、単に相談支援専門員が作成した障害児支援利用計画に基づき、児童発達支援管理責任者が児童発達支援計画を作成し、支援を実施するという上下の関係にはない。児童発達支援センター等から障害児相談支援事業者へ積極的に働きかけ、子どもや保護者の生活全般のニーズを充足するための双方向のやり取りを行う関係であることに留意して連携する必要がある。

2 児童発達支援計画の作成及び評価

児童発達支援管理責任者は、児童発達支援を利用する子どもと保護者のニーズを適切に把握し、児童発達支援が提供すべき支援の内容を踏まえて児童発達支援計画を作成し、すべての従業者が児童発達支援計画に基づいた支援を行っていけるように調整する。また、提供される支援のプロセスを管理し、客観的な評価等を行う役割がある。

(1)子どもと保護者及びその置かれている環境に対するアセスメント

  • 児童発達支援管理責任者は、子どもや家族への面談等により専門的な視点からのアセスメントを実施する。子どもと保護者及びその置かれている環境を理解するためには、子どもの障害の状態だけでなく、子どもの適応行動の状況を、標準化されたアセスメントツールを使用する等により確認する必要がある。
    また、子どもの発育状況、自己理解、心理的課題、子どもの興味・関心、養育環境、これまで受けてきた支援、現在関わっている機関に関すること、地域とのつながり、利用に当たっての希望、将来展望等について必要な情報をとり、子どもと保護者のニーズや課題を客観的に分析する。
  • 保護者のニーズと子ども自身のニーズは必ずしも一致するわけではないので、子どものニーズを明確化していくことがまず求められる。また、この発達の段階にある子どものニーズは変化しやすいため、日頃から状況を適切に把握して対応していく必要がある。

(2)児童発達支援計画の作成

  • 障害児相談支援事業者等が作成した障害児支援利用計画や、自らの事業所でアセスメントした情報について課題整理表等を用いて整理しながら児童発達支援におけるニーズを具体化した上で、児童発達支援の具体的な内容を検討し、児童発達支援計画を作成する。
  • 児童発達支援計画には、子どもと保護者の生活に対する意向、総合的な支援目標とその達成時期、生活全般の質を向上させるための課題、児童発達支援の提供すべき支援の内容を踏まえた具体的な支援内容、留意事項を含める。
  • 児童発達支援計画に、子ども本人のニーズに応じた「支援目標」を設定し、それを達成するために、「発達支援(本人支援及び移行支援)」、「家族支援」及び「地域支援」で示す支援内容から子どもの支援に必要な項目を適切に選択し、その上で、具体的な支援内容を設定する。なお、選択した支援内容の項目についても、具体的な支援内容と共に、児童発達支援計画に明記することが必要である。また、「いつ」、「どこで」、「誰が」、「どのように」、「どのくらい」支援するかということが、児童発達支援計画において常に明確になっていることが必要である。
  • 子ども又は保護者に対し、本ガイドラインの「児童発達支援の提供すべき支援」の「発達支援(本人支援及び移行支援)」、「家族支援」及び「地域支援」のねらい及び支援内容と、これに基づき作成された「児童発達支援計画」を示しながら説明を行い、子どもや家族の支援に必要な内容になっているかについて同意を得る必要がある。
  • 将来に対する見通しを持った上で、障害種別、障害の特性や子どもの発達の段階を丁寧に把握し、それらに応じた関わり方を考えていくことが必要である。
  • 支援手法については、個別活動と集団活動をその子どもに応じて適宜組み合わせる。
  • 計画の作成に際しては、従業者から児童発達支援計画の原案について意見を聞くなど、担当の従業者を積極的に関与させることが必要である。

(3)タイムテーブル、活動プログラムに沿った発達支援の実施

  • 児童発達支援センター等における時間をどのようにして過ごすかについて、一人一人の児童発達支援計画を考慮し、一日のタイムテーブルを作成する。タイムテーブルは、子どもの生活リズムを大切にし、日常生活動作の習得や、子どもが見通しを持って自発的に活動できるよう促されることが期待される。ただし、提供される活動プログラムを固定化することは、経験が限られてしまうことにもなるため、活動プログラムの組合せについて、創意工夫が求められる。
  • 発達支援の時間は十分に確保されなければならず、送迎の都合で発達支援の時間が阻害されることのないようタイムテーブルを設定しなければならない。
  • 活動プログラムは、子どもの障害種別、障害の特性、発達の段階、生活状況や課題等に応じた内容を組み立て、従業者も交えながらチームで検討していくことが必要である。
  • 集団活動の場合は、対象児の年齢や障害の状態の幅の広さを考慮しながら、活動プログラムを作成する必要がある。子どもの年齢や発達課題が異なることも多いことから、年齢別又は障害別、発達課題別に支援グループを分けることも考慮する必要がある。
  • 活動プログラムの内容は、本ガイドラインに記載されている児童発達支援の提供すべき支援の内容等を十分に踏まえたものでなければならない。

(4)児童発達支援計画の実施状況の把握(モニタリング)

  • 児童発達支援計画は、概ね6ヶ月に1回以上モニタリングを行うことになっているが、子どもの状態や家庭状況等に変化があった場合にはモニタリングを行う必要がある。モニタリングは、目標達成度を評価して支援の効果を測定していくためのものであり、単に達成しているか達成していないかを評価するものではなく、提供した支援の客観的評価を行い、児童発達支援計画の見直しの必要性を判断する。

(5)モニタリングに基づく児童発達支援計画の変更及び児童発達支援の終結

  • モニタリングにより、児童発達支援計画の見直しが必要であると判断された場合は、児童発達支援計画の積極的な見直しを行う。その際、支援目標の設定が高すぎたのか、支援内容があっていなかったのか、別の課題が発生しているのか等の視点で、これまでの支援内容等を評価し、今後もその支援内容を維持するのか、変更するのかを判断していく。現在提供している児童発達支援の必要性が低くなった場合は、児童発達支援計画の支援目標の大幅な変更や児童発達支援の終結を検討する。なお、児童発達支援計画の支援目標の大幅な変更や児童発達支援の終結時には、設置者・管理者へ報告する。
  • 児童発達支援計画の支援目標の大幅な変更や児童発達支援の終結に当たっては、児童発達支援センター等から家族や障害児相談支援事業所、保育所等の関係機関との連絡調整を実施し、障害児支援利用計画の変更等を促す。また、他の機関・団体に支援を引き継ぐ場合には、これまでの児童発達支援の支援内容等について、適切に情報提供することが必要である。

第4章 関係機関との連携

障害のある子どもの発達支援は、子ども本人が支援の輪の中心となり、様々な関係者や関係機関が関与して行われる必要があり、これらの関係者や関係機関は連携を密にし、情報を共有することにより、障害のある子どもに対する理解を深めることが必要である。

このため、児童発達支援センター等は、日頃から市町村の障害児支援担当部局、母子保健や子ども・子育て支援、社会的養護等の児童福祉担当部局、保健所・保健センター、病院・診療所、訪問看護ステーション、発達障害者支援センター、障害児相談支援事業所、保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、特別支援学校(幼稚部及び小学部)、児童委員や主任児童委員等の関係機関と連携を図り、児童発達支援が必要な子どもと保護者が、円滑に児童発達支援の利用に繋がるとともに、その後も、子どもの支援が保育所や学校等に適切に移行され、適切な支援が引き継がれていくことが必要である。

また、子ども本人が中心となった支援の輪の中において、児童発達支援センター等に期待される役割を認識し、子どもに対し適切な支援を提供することが必要である。

さらに、障害のある子どもが健全に発達していくためには、地域社会とのふれあいが必要であり、そうした観点からは児童発達支援センター等が地域社会から信頼を得ることが重要であるが、そのためには、地域社会に対して、児童発達支援に関する情報発信を積極的に行うなど、地域に開かれた事業運営を心がけることが求められる。

1 母子保健や医療機関等との連携

(1)母子保健等との連携

子どもの発達支援の必要性は、新生児聴覚検査、乳幼児健康診査、市町村保健センター等の発達相談、保育所等の利用等を通して気づかれる場合があり、気づきの段階から継続的な支援を行うため、母子保健や子ども・子育て支援等の関係者や関係機関と連携した支援が必要である。

(2)医療機関や専門機関との連携

医療的ケアが必要な子どもや重症心身障害のある子どもが医療機関(NICU等)から在宅生活に移行し、その後も在宅生活を継続していくために、地域の保健、医療、保育、教育等の関係機関と連携した支援が必要である。

子どもの事故やけが、健康状態の急変が生じた場合に備え、近隣の協力医療機関をあらかじめ定めておく必要がある。特に、医療的ケアが必要な子どもや重症心身障害のある子どもは、事前に協力医療機関を受診し、医師に子どもの状態について理解しておいてもらうことも必要である。

また、医療的なケアが必要な子どもを受け入れる場合は、子どもの主治医等との連携体制を構築しておく必要がある。

さらに、保護者による子どもの虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市町村が設置する要保護児童対策地域協議会等を活用しながら、児童相談所や児童家庭支援センター、市町村の児童虐待対応窓口、保健所等の関係機関・団体と連携して対応を図る必要がある。

2 保育所や幼稚園等との連携

子どもが成長し、児童発達支援センター等から地域の保育所や認定こども園、幼稚園、特別支援学校(幼稚部)等に支援を移行する際には、児童発達支援計画と個別の教育支援計画等を含め、子どもの発達支援の連続性を図るため、保護者の了解を得た上で、子ども本人の発達の状況や障害の特性、児童発達支援センター等で行ってきた支援内容等について情報を共有しながら相互理解を図り、円滑に支援が引き継がれるようにすることが必要である。

また、この際は、引継ぎを中心とした移行支援会議において、障害児相談支援事業所と連携することが重要である。

さらに、児童発達支援センターにおいては、保育所等の職員が障害のある子どもへの対応に不安を抱える場合等に、保育所等訪問支援や巡回支援専門員整備、障害児等療育支援事業等の積極的な活用を図ることにより、適切な支援を行っていくことが重要である。

加えて、保育所や認定こども園、幼稚園、特別支援学校(幼稚部)等との交流や、同年代の障害のない子どもと活動する機会の確保も必要である。

3 他の児童発達支援センターや児童発達支援事業所等との連携

地域の児童発達支援センターや児童発達支援事業所は、障害種別や障害の特性の理解、障害種別や障害の特性に応じた活動や支援方法、支援困難事例等について、合同で研修を行うことやそれぞれから助言をし合うことにより、連携を図りながら適切な支援を行っていく必要がある。

また、発達障害者支援センター等の専門機関と連携し、助言や研修等を受けることも必要である。

さらに、発達支援上の必要性により、他の児童発達支援センター等を併せて利用する子どもについて、支援内容を相互に理解しておくため、保護者の了解を得た上で、他の児童発達支援センター等の事業所との間で、子ども本人の日常生活動作の状況や留意事項、相互の支援内容や個別の支援計画の内容等について情報共有を図ることが必要である。

4 学校や放課後等デイサービス事業所等との連携

  • 子どもが成長し、児童発達支援センター等から小学校や特別支援学校(小学部)に進学する際には、児童発達支援計画と個別の教育支援計画等を含め、子どもの発達支援の連続性を図るため、保護者の了解を得た上で、児童発達支援計画の内容だけでなく、子ども本人の発達の状況や障害の特性、児童発達支援センター等で行ってきた支援内容等について情報共有を図り、円滑に支援が引き継がれるようにすることが必要である。
    また、児童発達支援センターにおいては、小学校や特別支援学校(小学部)への保育所等訪問支援等の実施により、子どもの支援が継続できるようにしていくことも必要である。
  • 放課後等デイサービスの利用を開始する場合についても、放課後等デイサービス計画が適切に作成されるよう、学校の場合と同様に情報の共有が必要である。また、放課後等デイサービス利用開始後も、より適切な発達支援を実施するために連携体制を継続し、必要な情報提供や助言を行うことが望ましい。
    こうした、支援の移行の際は、引継ぎを中心とした移行支援会議において、障害児相談支援事業所と連携することが重要である。

5 協議会等への参加や地域との連携

児童発達支援センター等は、(自立支援)協議会子ども部会や地域の子ども・子育て会議、要保護児童対策地域協議会等へ積極的に参加すること等により、関係機関・団体等と連携して、地域支援体制を構築していく必要がある。

また、日頃から地域の行事や活動に参加できる環境を作るため、自治会の会合に参加することや、地域のボランティア組織と連絡を密にする等の対応をとることが必要である。

第5章 児童発達支援の提供体制

1 定員

設置者・管理者は、設備、従業者等の状況を総合的に勘案し、適切な生活環境と事業内容が確保されるよう、障害のある子どもの情緒面への配慮や安全性の確保の観点から、適切な利用定員を定めることが必要である。

2 職員配置及び職員の役割

(1)適切な職員配置

  • 児童発達支援センターにおいては、嘱託医、児童発達支援管理責任者、児童指導員及び保育士、機能訓練担当職員(機能訓練を行う場合)の配置が必須であり、主に重症心身障害のある子どもに対して児童発達支援を行う場合は、看護師、機能訓練担当職員の配置を行い、医療的ケア等の体制を整える必要がある。
  • 児童発達支援事業所においては、児童発達支援管理責任者、指導員又は保育士、機能訓練担当職員(機能訓練を行う場合)の配置が必須であり、主に重症心身障害のある子どもに対して児童発達支援を行う場合は、指導員に代えて児童指導員、さらに嘱託医、看護師、機能訓練担当職員の配置を行い、医療的ケア等の体制を整える必要がある。
  • 常時見守りが必要な子どもや医療的ケアが必要な子ども、重症心身障害のある子ども等への支援のために、指導員又は保育士、看護師について、人員配置基準を上回って配置することも考慮する必要がある。
  • 児童発達支援管理責任者が個々の子どもについて作成する児童発達支援計画に基づき、適切な知識と技術をもって活動等が行われるよう、支援の単位ごとに、従業者を統括する指導的役割の職員が配置されている必要があり、この職員には保育士等の資格を保有する者を充てるなど、支援の質の確保の視点から、適切な職員配置に留意する必要がある。

(2)設置者・管理者の責務

  • 設置者・管理者は、児童発達支援センター等の役割や社会的責任を遂行するために、法令等を遵守し、設置者・管理者としての専門性等の向上を図るとともに、児童発達支援の質及び職員の資質向上のために必要な環境の確保を図らなければならない。
  • 設置者・管理者は、児童発達支援センター等が適切な支援を安定的に提供することにより、障害のある子どもの発達に貢献するとともに、子どもや保護者の満足感、安心感を高めるために、組織運営管理を適切に行わなければならない。
  • 設置者・管理者は、各職員が目指すキャリアパスに応じた研修等に参加することができるよう、職員の勤務体制等を工夫し、職員一人一人の資質及び専門性の向上の促進を図らなければならない。
  • 設置者・管理者は、職員一人一人の倫理観及び人間性を把握し、職員としての適性を適確に判断する責任がある。
  • 設置者・管理者は、質の高い支援を確保する観点から、従業者等が心身ともに健康で意欲的に支援を提供できるよう、労働環境の整備を図る必要がある。

(3)設置者・管理者による組織運営管理

設置者・管理者は、事業所の運営方針や、児童発達支援計画、日々の活動に関するタイムテーブルや活動プログラムについて、児童発達支援管理責任者及び従業者の積極的な関与のもとでPDCAサイクルを繰り返し、事業所が一体となって不断に支援の質の向上を図ることが重要である。

また、設置者・管理者は、PDCAサイクルを繰り返すことによって、継続的に事業運営を改善する意識を持って、児童発達支援管理責任者及び従業者の管理及び事業の実施状況の把握その他の管理を行わなければならない。

ア 事業運営の理念・方針の設定・見直しと職員への徹底
  • 児童発達支援センター等の事業所ごとに、運営規程を定めておくとともに、児童発達支援管理責任者及び従業者に運営規程を遵守させておかなければならない。運営規程には以下の重要事項は必ず定めておく必要がある。
    【運営規程の重要事項】
    • 事業の目的及び運営の方針
    • 従業者の職種、職員数及び職務の内容
    • 営業日及び営業時間
    • 利用定員
    • 児童発達支援の内容並びに保護者から受領する費用の種類及びその額
    • 通常の事業の実施地域
    • 支援の利用に当たっての留意事項
    • 緊急時等における対応方法
    • 非常災害対策
    • 事業の主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類
    • 虐待の防止のための措置に関する事項
    • その他運営に関する重要事項
  • 事業の目的及び運営方針は、本ガイドラインに記載されている児童発達支援の役割や児童発達支援の提供すべき内容、地域での子どもや保護者の置かれた状況、児童発達支援が公費により運営される事業であること等を踏まえ、適切に設定する。
  • 事業の目的及び運営方針の設定や見直しに当たっては、児童発達支援管理責任者及び従業者が積極的に関与できるように配慮する。
  • 児童発達支援管理責任者及び従業者の採用に当たっては、事業所の目的及び運営方針を始めとした運営規程の内容を丁寧に説明するとともに、様々な機会を通じて繰り返しその徹底を図る。
イ 複数のサイクル(年・月等)での目標設定と振り返り
  • PDCAサイクルにより不断に業務改善を進めるためには、児童発達支援管理責任者及び従業者が参画して、複数のサイクル(年間のほか月間等)で事業所としての業務改善の目標設定とその振り返りを行うことが必要である。
ウ 自己評価結果の公表
  • 本ガイドラインに加え、別添の「児童発達支援センター等における事業所全体の自己評価の流れ」を踏まえ、「事業所職員向け児童発達支援自己評価表」(別紙1)を活用して行う児童発達支援センター等の職員による事業所の支援の評価及び別添の「保護者等向け児童発達支援評価表」(別紙2)を活用して行う保護者等による事業所評価を踏まえ、事業所全体として自己評価を行う必要がある。
  • 事業所の自己評価結果による児童発達支援の質の評価及び改善の内容については、事業所全体による自己評価に基づき、「事業所における自己評価結果(公表)」(別紙3)及び「保護者等からの事業所評価の集計結果(公表)」(別紙4)を用いて、概ね1年に1回以上、利用者や保護者等に向けて、インターネットのホームページや会報等で公表していくことが必要である。
  • また、この事業所による自己評価のほか、可能な限り、第三者による外部評価を導入して、事業運営の一層の改善を図ることが必要である。
エ コミュニケーションの活性化等
  • PDCAサイクルによる業務改善が適切に効果を上げるには、現状の適切な認識・把握と、事業所内での意思の疎通・情報共有が重要である。
  • 支援提供の日々の記録については、児童発達支援管理責任者が把握する以外に、従業者同士での情報共有を図ることも支援の質の向上のために有用である。職場での何でも言える雰囲気作りや職員同士のコミュニケーションの活性化も設置者・管理者の役割である。
  • 児童発達支援計画の作成・モニタリング・変更の結果について、児童発達支援管理責任者から報告を受けるなど、児童発達支援管理責任者や従業者の業務の管理及び必要な指揮命令を行う。
  • 支援内容の共有や職員同士のコミュニケーションの活性化が事業所内虐待の防止や保護者による虐待の早期発見に繋がるものであることも認識しておくとともに、設置者・管理者も、適切な支援が提供されているか把握しておく必要がある。
オ 子どもや保護者の意向等の把握
  • PDCAサイクルによる業務改善を進める上で、アンケート調査等を実施して、支援を利用する子どもや保護者の意向や満足度を把握することが必要である。
  • 特に子どもや保護者の意向等を踏まえて行うこととした業務改善への取組については、子ども及び保護者に周知していくことが必要である。
カ 支援の継続性
  • 児童発達支援は、子どもや保護者への支援の継続性の観点から継続的・安定的に運営することが必要である。やむを得ず事業を廃止し又は休止しようとする時は、その一月前までに都道府県知事等に届け出なければならない。この場合、子どもや保護者に事業の廃止又は休止しようとする理由を丁寧に説明するとともに、他の児童発達支援センター等を紹介するなど、子どもや保護者への影響が最小限に抑えられるように対応することが必要である。

3 施設及び設備

  • 児童発達支援センター等は、児童発達支援を提供するための設備及び備品を適切に備えた場所である必要がある。設置者・管理者は、様々な障害のある子どもが安全に安心して過ごすことができるようバリアフリー化や情報伝達への配慮等、個々の子どもの態様に応じた工夫が必要である。
  • 児童発達支援事業所の指導訓練室については、床面積の基準は定められていないが、児童発達支援センターが児童発達支援事業を行う場合においては、子ども一人当たり2.47㎡の床面積が求められていることを参考としつつ、適切なスペースの確保に努めることが必要である。
  • 子どもが生活する空間については、指導訓練室のほか、おやつや昼食がとれる空間、静かな遊びのできる空間、雨天等に遊びができる空間、子どもが体調の悪い時等に休息できる静養空間、年齢に応じて更衣のできる空間等を工夫して確保することが必要である。
    また、室内のレイアウトや装飾にも心を配り、子どもが心地よく過ごせるように工夫することが必要である。
  • 屋外遊びを豊かにするため、屋外遊技場の設置や、近隣の児童遊園・公園等を有効に活用することが必要である。
  • 備品については、遊具のほか、障害種別、障害の特性及び発達状況に応じた支援ツールを備えることも考慮していくことが必要である。

4 衛生管理、安全対策

設置者・管理者は、障害のある子どもや保護者が安心して児童発達支援センター等の支援を受け続けられるようにするためには、児童発達支援センター等を運営する中で想定される様々なリスク、例えば、子どもの健康状態の急変、非常災害、犯罪、感染症の発生と蔓延等に対する対応マニュアルの策定や発生を想定した訓練、関係機関・団体との連携等により、日頃から十分に備えることが必要である。

(1)衛生・健康管理

  • 設置者・管理者は、感染症の予防や健康維持のために、職員に対し常に清潔を心がけさせ、手洗い、手指消毒の励行、換気等の衛生管理を徹底することが必要である。
  • 設置者・管理者は、感染症又は食中毒が発生した場合の対応や、排泄物又は嘔吐物等に関する処理方法についての対応マニュアルを策定し職員に周知徹底を図るとともに、マニュアルに沿って対応できるようにすることが必要である。
  • 設置者・管理者は、子どもの健康状態の把握及び感染症発生の早期発見のために、子どもの来所時の健康チェック及び保護者との情報共有の体制を構築しておくことが必要である。また、感染症発生動向に注意を払い、インフルエンザやノロウイルス等の感染症の流行時には、子どもの来所時の健康チェック及び保護者との情報共有体制を強化する必要がある。さらに、インフルエンザやノロウイルス等の感染症により集団感染の恐れがある場合は、子どもの安全確保のために、状況に応じて休所とする等の適切な対応を行うともに、保護者や各関係機関・団体との連絡体制を構築しておく必要がある。
  • 職員は、事前に、服薬や予防接種、てんかん発作等の子どもの状況を確認しておくとともに、子どもの健康管理に必要となる器械器具の管理等を適正に行う必要がある。
  • 設置者・管理者は、食物アレルギーのある子どもについて、医師の指示書に基づき、食事やおやつを提供する際に、除去食や制限食で対応できる体制を整えることが必要である。
  • 設置者・管理者は、重症心身障害のある子どもなど、全身性障害がある子どもについては、常に骨折が起こりやすいことを念頭におき、適切な介助が行える体制を整えるとともに、誤嚥性肺炎を起こさないよう、摂食時の姿勢や車いすの角度等の調整、本人の咀嚼・嚥下機能に応じた適切な食事の介助を計画的・組織的に行えるようにすることが必要である。

(2)非常災害・防犯対策

  • 設置者・管理者は、非常災害に備えて消火設備等の必要な設備を設けるとともに、非常災害に関する具体的計画を立て、非常災害時の避難方法や、関係機関・団体への通報及び連絡体制を明確にするとともに、それらを定期的に職員や保護者に周知しなければならない。
  • 設置者・管理者は、非常災害の発生に備え、定期的に避難、救出その他必要な訓練を行わなければならない。
  • 設置者・管理者は、重大な災害の発生や台風の接近等により危険が見込まれる場合には、子どもの安全確保のために、状況に応じて児童発達支援センター等を休所とする等の適切な対応を行うとともに、保護者や保育所等の関係機関・団体との連絡体制を構築しておく必要がある。また、地震や風水害等の緊急事態に対して、重要な事業を継続又は早期に復旧させるための事業継続計画(BCP)を策定することが望ましい。
  • 職員は、障害種別や障害の特性ごとの災害時対応について理解しておくとともに、児童発達支援管理責任者は、子どもごとの児童発達支援計画に災害時の対応について記載することも必要である。
    特に医療的ケアが必要な子どもについては、保護者や主治医、嘱託医及び協力医療機関等との間で災害発生時の対応について綿密に意思疎通を図っておくことが重要であり、設置者・管理者は、職員に徹底する必要がある。
  • 設置者・管理者は、外部からの不審者の侵入を含め、子どもが犯罪に巻き込まれないよう、事業所として防犯マニュアルの策定や、地域の関係機関・団体等と連携しての見守り活動、子ども自身が自らの安全を確保できるような学習支援など、防犯に係る安全確保への取組を行う必要がある。

(3)緊急時対応

  • 設置者・管理者は、子どもの事故やケガ、健康状態の急変が生じた場合は、速やかに保護者、協力医療機関及び主治医に連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。
  • 設置者・管理者は、緊急時における対応方法について「緊急時対応マニュアル」を策定するとともに、職員が緊急時における対応方針について理解し、予め設定された役割を実行できるように訓練しておく必要がある。
    また、設置者・管理者は、例えば、てんかんのある子どもが急な発作を起こした場合に速やかに対応できるよう、個々の子どもに応じた緊急の対応方法や搬送先等について、個別の緊急時対応マニュアルとして策定して、職員間で共有することも必要である。
  • 職員は、医療的ケアを必要とする子ども等の支援に当たっては、窒息や気管出血等、生命に関わる事態への対応を学び、実践できるようにしておく必要がある。

(4)安全確保

  • 職員は、支援の提供中に起きる事故やケガを防止するために、室内や屋外の環境の安全性について毎日点検し、必要な補修等を行い、危険を排除することが必要である。
    また、職員は、衝動的に建物から出てしまう子ども等もいるため、子どもの特性を理解した上で、必要な安全の確保を行う必要である。
  • 設置者・管理者は、発生した事故事例や、事故につながりそうな事例の情報を収集し、ヒヤリハット事例集を作成し、職員間で共有することが必要である。

5 適切な支援の提供

  • 設置者・管理者は、設備、職員等の状況を総合的に勘案し、適切な生活環境と事業内容が確保されるよう、障害のある子どもの情緒面への配慮や安全性の確保の観点から、利用定員の規模や、室内のレイアウトや装飾等に心を配り、必要に応じて改善を図る。
  • 職員は、児童発達支援の提供すべき支援の内容等について理解するとともに、児童発達支援計画に沿って、それぞれの子どもたちの障害種別、障害の特性、発達の段階、生活状況や課題に細やかに配慮しながら支援を行うことが必要である。
  • 職員は常に意思の疎通を図り、円滑なコミュニケーションが取れるようにすることが必要である。
  • 支援開始前には職員間で必ず打合せを実施し、その日行われる支援の内容や役割分担について把握する。
  • 支援終了後に職員間で打合せを実施し、その日の支援の振り返りをし、子どもや家族との関わりで気づいた点や、気になった点について職員間で共有する。
  • 職員は、その日行った支援の手順、内容、利用者の反応や気づきについて、記録をとらなければならない。また、日々の支援が目標や計画に沿って行われているか、記録に基づいて検証し、支援の改善や自らのスキルアップに繋げていく必要がある。

6 保護者との関わり

職員は、子どもや保護者の満足感、安心感を高めるために、提供する支援の内容を保護者とともに考える姿勢を持ち、子どもや保護者に対する丁寧な説明を常に心がけ、子どもや保護者の気持ちに寄り添えるように積極的なコミュニケーションを図る必要がある。

(1)保護者との連携

  • 職員は、日頃から子どもの状況を保護者と伝え合い、子どもの発達の状況や課題について共通理解を持つことが重要である。このため、医療的ケアの情報や介助の方法、適切な姿勢、気になることがあった場合の情報等について、連絡ノート等を通じて保護者と共有することが必要である。また、必要に応じて、家庭内での養育等についてペアレント・トレーニング等を活用しながら、子どもの育ちを支える力をつけられるよう支援したり、環境整備等の支援を行ったりすることが必要である。
  • 設置者・管理者は、送迎時の対応について、事前に保護者と調整していくことが必要である。また、施設内でのトラブルや子どもの病気・事故の際の連絡体制について、事前に保護者と調整し、その内容について職員間で周知徹底しておく必要がある。
  • 設置者・管理者は、職員が行う保護者への連絡や支援について、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握・管理することが必要である。

(2)子どもや保護者に対する説明責任等

職員は、子どもや保護者が児童発達支援を適切かつ円滑に利用できるよう、説明責任を果たすとともに、必要な支援を行う責務がある。

ア 運営規程の周知

設置者・管理者は、運営規程について、事業所内の見やすい場所に掲示する等により、その周知を図る。

イ 子どもや保護者に対する運営規程や児童発達支援計画の内容についての丁寧な説明

設置者・管理者は、子どもや保護者に対し、利用申込時において、運営規程や支援の内容を理解しやすいように説明を行う必要がある。特に、支援の内容、人員体制(資格等)、利用者負担、苦情解決の手順、緊急時の連絡体制等の重要事項については文書化の上、対面で説明する。

また、児童発達支援管理責任者は、児童発達支援計画の内容について、その作成時、変更時に子どもと保護者に対して丁寧に説明を行う必要がある。

ウ 保護者に対する相談援助等
  • 職員は、保護者が悩み等を自分だけで抱え込まないように、保護者からの相談に適切に応じ、信頼関係を築きながら、保護者の困惑や将来の不安を受け止め、専門的な助言を行うことも必要である。例えば、保護者との定期的な面談(最低限モニタリング時に実施することが望ましい)や訪問相談等を通じて、子育ての悩み等に対する相談を行ったり、子どもの障害について保護者の理解が促されるような支援を行ったりすることが必要である。
  • 職員は、父母の会の活動を支援したり、保護者会等を開催したりすることにより、保護者同士が交流して理解を深め、保護者同士のつながりを密にして、安心して子育てを行っていけるような支援を行うことが必要である。また、家族支援は保護者に限った支援ではなく、兄弟姉妹や祖父母等への支援も含まれる。特に兄弟姉妹は、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくないため、例えば、兄弟姉妹向けのイベントを開催する等の対応を行っていくことも必要である。
  • 設置者・管理者は、職員に対して、保護者との定期的な面談や保護者に対する相談援助について、その適切な実施を促すとともに、随時報告を受けることや記録の確認等により、把握・管理する必要がある。
エ 苦情解決対応
  • 設置者・管理者は、児童発達支援に対する子どもや保護者からの苦情(虐待に関する相談も含む)について、迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口や苦情受付担当者、苦情解決責任者、第三者委員の設置、解決に向けた手順の整理等、迅速かつ適切に解決が図られる仕組みを構築することが必要である。
  • 設置者・管理者は、苦情受付窓口について、子どもや保護者に周知するとともに、第三者委員を設置している場合には、その存在についても、子どもや保護者に周知する必要がある。
  • 設置者・管理者は、苦情解決責任者として、迅速かつ適切に対応する必要がある。
オ 適切な情報伝達手段の確保
  • 事業所は、定期的に会報等を発行し、活動概要や行事予定、連絡体制等の情報を子どもや保護者に対して発信することが必要である。
  • 視覚障害や聴覚障害等の障害種別に応じて、子どもや保護者との意思の疎通、情報伝達のための手話等による配慮が必要である。

7 地域に開かれた事業運営

  • 設置者・管理者は、地域住民の事業所に対する理解の増進や地域の子どもとしての温かい見守り、地域住民との交流活動の円滑な実施等の観点から、事業所はホームページや会報等を通じて活動の情報を積極的に発信することや、事業所の行事に地域住民を招待する等地域に開かれた事業運営を図ることが必要である。
  • 実習生やボランティアの受入れは、事業所及び実習生やボランティア双方にとって有益であり、設置者・管理者は、積極的に対応することが望ましい。ただし、実習生やボランティアの受入れに当たっては、事故が起きないよう適切な指導を行う等の対応が必要である。また、実習生やボランティアの受入れに当たっては、事業所の理念やプログラム内容及び障害のある子どもの支援上の注意事項等を理解させることが必要である。

8 秘密保持等

  • 設置者・管理者は、職員等(実習生やボランティアを含む。以下同じ。)であった者が、その業務上知り得た秘密を漏らすことがないよう、誓約書の提出や雇用契約に明記するなど、必要な措置を講じなければならない。
  • 職員は、関係機関・団体に子ども又はその家族に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により保護者等の同意を得ておかなければならない。また、ホームページや会報等に子ども又は保護者の写真や氏名を掲載する際には、保護者の許諾を得ることが必要である。
  • 職員等は、その職を辞した後も含めて、正当な理由がなく業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。

第6章 支援の質の向上と権利擁護

1 支援の質の向上への取り組み

児童福祉法第21条の5の17第2項の規定において、指定障害児事業者等は、その提供する障害児通所支援の質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、障害児通所支援の質の向上に努めなければならないとされている。そのためには、設置者・管理者は、「第三者評価共通基準ガイドライン(障害者・児福祉サービス版)」等により、第三者による外部評価を活用することが有効である。

また、適切な支援を安定的に提供するとともに、支援の質を向上させるためには、支援に関わる人材の知識・技術を高めることが必要であり、そのためには、設置者・管理者は、様々な研修の機会を確保するとともに、知識・技術の取得意欲を喚起することが重要である。

さらに、職員が児童発達支援センター等における課題について共通理解を深め、協力して改善に努めることができる体制を構築するためには、日常的に職員同士が主体的に学び合う姿勢が重要である。そのため、設置者・管理者は、児童発達支援センター等において職場研修を実施し、職員は当該研修を通じて、常に自己研鑽を図る必要がある。

加えて、設置者・管理者は、職員が外部で行われる研修等へ積極的に参加できるようにし、職員が必要な知識・技術の修得、維持及び向上を図れるようにする必要がある。

(1)職員の知識・技術の向上

  • 職員の知識・技術の向上は、児童発達支援の提供内容の向上に直結するものであり、職員の知識・技術の向上への取組は、設置者・管理者の重要な管理業務の一つである。
  • 設置者・管理者は、職員の資質の向上の支援に関する計画を策定し、その計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保することが必要である。資質の向上の支援に関する計画の策定に際しては、職員を積極的に参画させることが必要である。
  • 児童発達支援を適切に提供する上で、児童発達支援に期待される役割、障害のある子どもの発達の段階ごとの特性、障害種別・障害の特性、関連する制度の仕組み、関係機関・団体の役割、児童虐待への対応、障害者の権利に関する条約の内容等を理解することが重要であり、設置者・管理者は、職員に対してこうした知識の修得に向けた意欲を喚起する必要がある。
  • 障害種別、障害の特性に応じた支援や発達の段階に応じた支援、家族支援等に係る適切な技術を職員が修得することが、子どもの発達支援や二次障害の予防、家庭養育を支えるといった視点から重要であり、設置者・管理者は、職員に対してこうした技術の修得に向けた意欲を喚起する必要がある。

(2)研修受講機会等の提供

  • 設置者・管理者は、職員の資質向上を図るため、研修を実施する等の措置を講じなければならない。
    具体的には自治体や障害児等関係団体が実施する研修等への職員の参加、事業所における研修会や勉強会の開催(本ガイドラインを使用した研修会や勉強会等)、事業所に講師を招いての研修会の実施、職員を他の事業所等に派遣しての研修、事業所内における職員の自己研鑽のための図書の整備等が考えられる。また、医療的ケアが必要な子どもや重症心身障害のある子どもに対し、適切な支援が行われるよう、喀痰吸引等の研修を受講させることが必要である。
  • 児童発達支援管理責任者は、従業者に対する技術指導及び助言を行うことも業務となっており、設置者・管理者は、事業所内における研修の企画等に当たっては、児童発達支援管理責任者と共同して対応していくことが必要である。

2 権利擁護

障害のある子どもの支援に当たっては、児童の権利に関する条約、障害者の権利に関する条約、児童福祉法等が求める子どもの最善の利益が考慮される必要がある。特に、障害のある子どもが、自由に自己の意見を表明する権利並びにこの権利を実現するための支援を提供される権利を有することを認識することが重要である。具体的には、職員は、子どもの意向の把握に努める等により、子ども本人の意思を尊重し、子ども本人の最善の利益を考慮した支援を日々行う必要がある。

また、障害のある子どもの権利擁護のために、虐待等の子どもの人権侵害の防止に関する次のような取組も積極的に行っていくことが重要である。

(1)虐待防止の取組

  • 設置者・管理者は、職員による子どもに対する虐待を防止するため、虐待防止委員会の設置など、必要な体制の整備が求められる。
    虐待防止委員会の責任者は、通常、管理者が担うこととなる。虐待防止委員会を組織的に機能させるために、苦情解決の第三者委員等の外部委員を入れてチェック機能を持たせるとともに、児童発達支援管理責任者等、虐待防止のリーダーとなる職員を虐待防止マネージャーとして配置し、研修や虐待防止チェックリストの実施など、具体的な虐待防止への取組を進める。
  • 設置者・管理者は、職員に対する虐待防止啓発のための定期的な研修を実施し、又は自治体が実施する研修を受講させるほか、自らが虐待防止のための研修を積極的に受講する等により、児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「児童虐待防止法」という。)及び障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号。以下「障害者虐待防止法」という。)について理解し、虐待の防止への取組を進める必要がある。特に、「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」は必ず読むようにする。
    各都道府県で実施する虐待防止や権利擁護に関する研修を受講した場合には、児童発達支援センター等で伝達研修を実施することが重要である。
  • 職員等からの虐待(特に性的虐待)は、密室化した場所で起こりやすいことから、設置者・管理者は、送迎の車内を含め、密室化した場所を極力作らないよう、常に周囲の目が届く範囲で支援が実施できるようにする必要がある。
  • 職員等から虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合(相談を受けて虐待と認識した場合を含む。)、その職員は、障害者虐待防止法第16条に規定されている通報義務に基づき、児童発達支援の通所給付決定をした市町村の窓口に通報する。この時に、市町村に通報することなく、事業所の中だけで事実確認を進め、事態を収束させてしまうと通報義務に反することとなるため、必ず市町村に通報した上で行政と連携して対応を進める必要がある。
  • 職員は、虐待を発見しやすい立場にあることを認識し、子どもの状態の変化や家族の態度等の観察や情報収集により、虐待の早期発見に努めさせる必要がある。    職員は、保護者による虐待について、保護者に対する相談支援やカウンセリング等により未然防止に努めることが重要であることを認識する。
  • 職員は、保護者による虐待を発見した場合は、児童虐待防止法第6条に規定されている通告義務に基づき、市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所等へ速やかに通告するよう徹底する必要がある。虐待等により福祉的介入が必要とされるケースについては、市町村等が設置する要保護児童対策地域協議会等を活用しながら、児童相談所や児童家庭支援センター、市町村の児童虐待対応窓口、保健所等の関係機関・団体と連携して対応を図っていくことが求められる。

(2)身体拘束への対応

  • 職員等が自分の体で利用者を押さえつけて行動を制限することや、自分の意思で開けることのできない居室等に隔離すること等は身体拘束に当たり、障害のある子どもや他の障害のある子どもの生命又は身体を保護するために緊急やむを得ない場合を除き、禁止されている。
  • やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性、非代替性、一時性が要件となるが、身体拘束の検討が必要なケースについては、代替性がないか等について慎重に検討した上で、それでもなお、身体拘束を行わざるを得ない事態が想定される場合には、いかなる場合にどのような形で身体拘束を行うかについて、設置者・管理者は組織的に決定する必要がある。また、児童発達支援管理責任者は、児童発達支援計画に、身体拘束が必要となる状況、身体拘束の態様・時間等について、子どもや保護者に事前に十分に説明をし、了解を得た上で記載させることが必要である。
  • 身体拘束を行った場合には、設置者・管理者は、身体拘束を行った職員又は児童発達支援管理責任者から、その様態及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由等必要な事項の記録とともに報告を受ける。なお、必要な記録がされていない場合は、運営基準違反となることを認識しておく必要がある。

(3)その他

  • 設置者・管理者は、子どもの権利擁護に関する研修会を実施するなど、職員が子どもの人権を尊重した支援を行うために必要な取組を進めることが必要である。

別添 児童発達支援センター等における事業所全体の自己評価の流れ

別紙1 事業所職員向け 児童発達支援自己評価票

別紙2 保護者等向け 児童発達支援評価票

別紙3 事業所における自己評価結果(公表)

別紙4 保護者等からの事業所評価の集計結果(公表)

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